2016年5月12日木曜日

印刷でCMやってるプリントパックは『作業員の印刷機巻き込まれ死亡時も「印刷機の問題が発生してます」で済ます会社』

とある会社の「給料以外で会社に出勤しようと思わせるものは何ですか?」に対する社員たちの回答が… - Togetterまとめ

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プリントパックでの死亡労災事故の経過と背景 : 自主!自立!自治!中西印刷労働組合ブログ

2010年07月29日

全印総連 京都地連

去る3月22日京都市右京区の印刷会社プリントパックで入社してわずか一ヶ月半、希望溢れる26歳の青年労働者が菊全判8色機の大型印刷機デリバリ部分(排紙部分)に頭を挟まれ死亡する労災事故が起こりました。京都市域ではこの20年間で2度目の死亡労災事故です。

このプリントパックは前身が進洋製版という製版会社でしたが、「印刷通販」と銘打ってインターネット受注による365日24時間操業を行い、2005年売上7億円から2009年同52億円と5年間で売上を7.5倍に拡大急成長させています。印刷関連産業の中で製版業は生産器機のデジタル統合が進み、多くの部門が印刷会社社内で内製化された事で、業態として存続できなくなり生き残りをかけて新規事業への転換を進めている最中の事故でした。京都ではプリントパックと同様に伏見区のグラフィックという会社が、京阪写真製版から業態変革して同じようにインターネット受注による24時間365日操業で急成長しています。この二社は同地域でしのぎを削るライバル競合企業で、事故の背景にはこういった過酷な企業間競争もありました。事故の翌日同社のホームページには次の様なお詫びが掲示されていました。

「機械の不具合により暫くの間受注ができません」と。一人の未来ある青年の死は「機械の不具合」と扱われています。

同社の木村進治社長は顧客向けパンフレットの中で自社を次のように紹介しています。『新しい印刷のカタチを開発する。従来高品質であるがゆえに価格も高く、敷居の高かった「オフセット印刷」の世界にインターネットをはじめとするIT技術を活用することで圧倒的な低価格を実現。これによりデザイン・印刷関係などのプロフェッショナルユーザーには「受注競争に勝ち抜く価格」を、また一般企業のクライアントには「印刷経費の激減売上アップ効果」を提供すべく取り組んでいる。こうした評価として業界屈指のリピート利用率や年間100回以上利用のヘビーユーザーも多い。また個人顧客からの利用も急増しており「オフセット印刷の感動を広める」「誰もが気軽にオフセット印刷を利用できる」ことを志している。現在会社を挙げての「日本一安い価格」への挑戦を続けている』。

しかしインターネット受注は、24時間型物流体制に支えられて地域間距離差を取り除き、ひたすら「安さ」を競い合うベンチャー企業は全国に拡大しています。これらの企業競争は、あたかも牛丼の価格競争のようにどこかが倒れるまで単価を下げるダンピング競争となり結果として「ひたすら受注し続ける」事でだけ企業が存立できる構造的な自転車操業を作り出しています。どの企業も「低価格」を他社より一歩でも進めるため、コストカットに躍起となり、労務コストをカットし雇用をカットしそしてついに安全衛生もカットして労働者の命が犠牲となりました。産業構造全体の熾烈なコストカット競争の結果が今回の死亡労災事故であり、決して一企業の偶発的な事故ではありません。こういった淘汰の市場競争を展開する企業は、当然地元の経営者団体に(京都府印刷工業組合など)加盟しないアウトロー企業で、業界としての経営・生産秩序にも参加する意思を持ってはいせん。

一方、昨年末にはこの会社で働く労働者から「月130時間の残業が常態化しておりこのままでは身も心ももたない」と地域労組に労働相談が持ち込まれ、全印総連が「労働組合に入って労働条件を改善しよう」と情宣活動を強めていた矢先の事故でした。

印刷産業は京都府においては全国に2府県しかない産業別最低賃金の対象となっているように(長野県と共に)地場産業的な色彩を持つ一方で、先に指摘したような厳しい過当競争の中でダンピングが横行する受注産業です。とにかく「安く早く」を競い合う業態は、他の製造業とは違って計画的な生産が困難な構造を持つ産業といえます。そのため、無理な受注を続けると、労働基準法諸規定を守るどころか労働者の安全や健康すらもないがしろにされかねない構造的な条件・環境があります。

しかし、命が脅かされるような産業にしたくないという思いは働く労働者が共通して持っています。全印総連京都地連はこのような労働者の願いをもとに、業界団体である京都府印刷工業組合、京都労働局、プリントパック社にそれぞれ申し入れ行動を行いました。

京都労働局には4月5日、事故の原因究明・公開とともに、事故の背景として印刷産業に蔓延する36協定無視や協定の捏造、36協定未締結の長時間残業など重大事故に繋がる就労実態を今後監督指導することを申し入れました。しかし事故原因の調査結果公表には「絶対にそれはしないし出来ない」と頑なに拒否しています。印刷機器の構造はどのメーカーの機器も同一で、「それでは産業としてこのような事故の予防対策が講じられない」と指摘すると押し黙っていましたが、この様な重大事故の原因を当該企業内の「改善指導」に留めるのではなく同一産業内での事故防止の教訓とする指導が必要なはずです。行政としての規定があるのでしょうが、労働行政一般論ではなく労働者保護行政の視点が必要と痛感しています。

4月7日には全印総連京都地連の役員とともにプリントパック社を訪れ、社長らに次の申入れ文を手渡して説明を行ないました。

  • 一、今回の死亡事故原因および再発対策を早急に社内外に公表し、従業員も利用者も納得・安心できる措置をとること。
  • 一、今回の労災犠牲者ご遺族に対して充分な補償を行うこと。
  • 一、労安法で設置が義務付けられている安全衛生委員会に関し、貴社における委員会の毎月開催・議事録作成・従業員への審議内容公開を実施すること。
  • 一、諸法令に基づき、36協定等を遵守し所定外労働削減、過重労働による健康障害防止の対策を、講じ従業員が安心して働き続けられる職場作りをすすめること。

同社の木村社長はこれに対し、「あってはならない事故でご迷惑をおかけしている」「対策委員会を立ち上げて今対策を検討している」等と応え、真摯に対応することをその場では表明し調査結果は逐次ホームページ上で公開すると説明しましたが、5月中旬現在その調査結果公開はされていません。

一人の労働者がなぜ職場で死ななくてはならないのか。過労死や過労自殺が後を絶たない日本社会は異常です。人の命の重さをもう一度再認識しケガや死亡が出ない職場にしていかなくてはなりません。そのためには、労働組合が「安全なくして労働なし」というスローガンをかかげ、自らの職場の安全、衛生を守る闘いをすすめなければなりません。

また印刷産業に広くはびこる長時間労働は、今回のような事故の温床ともいえます。2010春闘でも10年以上に渡って36協定未締結で慢性的な長時間残業を放置してきた企業との協定締結交渉で、企業側はこれまでの長時間残業の実態を追認するだけの【1日5時間まで労働時間延長】の案を出してきました。理由は『「受注産業」だから』です。

長時間残業、36協定無視や協定の捏造、36協定未締結の残業など、重大事故につながる就労実態を改善することが求められています。多くの労働者にこのことを知らせ、労働条件の改善の取り組みを広げていくために奮闘します。

また検索経由で…

プリントパックで「死亡事故」印刷機における問題で済ます (11/3追記) | ちほちゅう

"弊社印刷機における問題のため、(中略)一時休止させていただいておりました"とのことだ。まあ、いっていることは間違っていないのだが、死亡事故について一切触れていない。

別の話だけど、前に自分担当で安全設計で出荷した装置も、出荷先の現場が「作業しづらい」と安全装置を無効化して動かしてる、と聞いたこともあるし…。先方の事情とかもあるだろうから…死人・怪我人は出さないで、としか。

プレス機は怖いと思ってたけど、今回調べて印刷機も仲間入り。プリントパックのこの対応は拡散だなぁ。

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