2016年6月9日木曜日

三日坊主を卒業できる「Google カレンダー」新機能--“人の生き方”を機械学習が改善する

めも。

三日坊主を卒業できる「Google カレンダー」新機能--“人の生き方”を機械学習が改善する - CNET Japan

CNET Japan インタビュー

山川晶之 (編集部) 2016/06/08 12:00

Googleは、Google Appsのカレンダーアプリに新機能「ゴール」を追加した。これは、達成したい目標をあらかじめ設定すると、カレンダーが算出したベストであろう時間に自動で予定を入れる機能だ。

例えばランニングを達成目標に設定すると、カレンダー側で自動的にランニングのスケジュールを設定する。もし、その日にランニングをしなかった場合は、予定のリマインダーにある「延期」ボタンを押すことで、予定を実行できそうな時間帯を探し出して自動的にリスケジューリングする。

また、複数人のカレンダーから共通で空いた時間を見つけ出してくれる「時間を探す」機能も登場した。面倒な会議のスケジューリングなどで効果を発揮してくれそうだ。

これらの新機能はすべて「Make Time」と呼ばれるテーマにもとづいて開発されており、Googleが推し進めている機械学習も取り入れられている。2つの機能は連携しており、時間を探すではゴールで設定されたスケジュールを避けて調整してくれるので、“自分のための時間”をキープしながら効率的なスケジューリングが可能となる。

こうしたユニークな機能を実装した狙いとは何か。また、機械学習がもたらした効果などについて、米国のGoogle本社でGmail&Google カレンダー製品担当プロダクトマネジメントディレクターのアレックス・ガウリー氏に話を聞いた。

目標達成が苦手でも、目標にコミットするようアシストすると人は達成できる

――どのような発想で「ゴール」機能の実装に至ったのでしょうか。

カレンダーを使って、個人が持つ目標や理想の達成を支援したいのです。たとえば、ランニングする、読書する、家族との時間を増やすという目標をゴールを使うことで叶えることができます。

機能の実装にあたり、学術研究結果を調べました。ランニングを日常に取り入れたいという目標を設定した人で、自然に目標を達成できる確率は30%にすぎません。これを改善する方法として、ランニングがいかにメリットがあるかを説明するよりも、ユーザーが週に何回ランニングするか、朝にするか、夜にするかなど、何らかの形でユーザー自身が目標にコミットしていくよう働きかけることで、達成率が90%に上がったという結果を見つけたのです。こうしたヒントから、ゴール機能の実装に至りました。

――ガウリー氏は、目標達成するのは上手な方ですか。

いいえ(笑)、自分は目標を達成することが苦手でした。ただ、こうした問題は自分だけではなく、目標を達成するために、既存のカレンダーアプリを工夫して使用していたユーザーは多くいました。

しかし、ランニングの予定を入れても、実はその時間は別の予定とバッティングしてしまっており、カレンダー上のランニングの予定をスライドすることなく、結局達成できなかったということも多くあると感じています。

――すでに「ゴール」を使って予定は達成しましたか。

2016年の初めに、週3回のランニングをゴールとして設定しました。結果、アシスト機能があまりにもうまくいったため、少し頻度を下げる必要がありました。また、別の開発メンバーは読書をゴールに設定したところ、ゴール設定後の3カ月分の読書量が、2015年1年間の量を上回ったのです。

――なぜここまで変化したのでしょうか。

以前のカレンダーでは、確実なタスクのみ入力していました。今回のゴールでは、ユーザー自身が達成したいとする目標を支援します。ユーザーは、自身のふるまいを変えたいとする意識をもともと持っているのですが、これまでそれを支援するツールが無かったのです。

――もう一つの機能である「時間を探す」について教えてください。

これまでのカレンダーの課題は、ミーティングとミーティングの間に空きがあった場合、他の人からは「空いている時間」だと見えてしまうことでした。

しかし、当人としてはミーティング外の空いている時間を使い、別の作業を済ませたい、記事を書きたい、コードを書きたいといったことのためにキープしてある隙間時間の可能性もあります。当人も、予定は空いていないと言いづらいものですが、「時間を探す」によって自分自身では守りにくい隙間時間を保護してくれるのです。

――確かに、別の作業に当てようと思っていた時間も「今空いてる?」と聞かれたら断れません。

我々のチームでもいろいろと検討しました。ミーティングなど、すでに決まっている予定のほかに、「緩やかだけどやらなければいけないこと」の部分にこの新機能を活用できます。人間側が言い出しにくいことを補うために、機械学習のシステムが活用できるのです。

「Make Time」を下支えする「機械学習」

――今回のゴールという機能、個人的にはパーソナル秘書のようなイメージを持ちました。

我々の中では擬人化することは考えていません。個人が抱えている個々の問題の解決にあたってどういった支援ができるか、Googleが持つリソースをどのように使えば問題解決できるかなどの視点で考えています。「秘書」といった見方も一つの視点ですが、どちらかと言えば達成したい目的や課題があり、どのように支援するかといった発想から来ています。

――Googleの機械学習は、はじめはGmailのスパムプロテクションなどから始まったかと思いますが、ここ数年インテリジェンス性が高まっている印象です。

機械学習は、Google創立時から私たちのコアにあったものだと思っています。検索自体も機械学習の問題解決機能としてとらえることもできます。Gmailのスパムプロテクションも機械学習ベースです。そのほかのアプリケーションであっても、コンピュータを使って人生を、日常を楽に過ごせるためのコアになっているのが機械学習なのです。

また、10年間でコンピュータが強力になったことで、「Deep Neural Network」などの研究も盛んになってきました。これにより、さまざまな問題解決に機械学習が使えるようになったわけです。例えば、写真内のオブジェクトを識別することで、オブジェクトの名前に関連する写真だけを探し出すことができます。また、メールの内容から返信メールを自動生成するInboxのスマートリプライも、2~3年前では実現できない技術でした。この機能は現在、返信メールの10%で使用されています。

――情報過多の現代では、AIが生活のパートナーになっていく実感があります。

Gmailのスパムプロテクションは、メールが抱えている課題の解決からはじまりました。今では、不要な情報を排除して重要なメールをカテゴリ分けできるようになりました。進化の過程はこれからも続けていきたいです。

また、Gmailと同様の問題・課題がユーザーの別の生活の場面でも出てきていますので、それらの解決方法を検討するにあたり、機械学習がキーになってくると考えています。

――また、ワークスタイルも機械学習によって大きく変わっていく印象があります。将来についてどのようにお考えでしょうか。

非常に大きく変化したのはモバイル化が進んだことでしょう。しかも、ユーザーが複数のデバイスを持つようになり、いつでもどこでもデータにアクセスできるようになることで、ワークスタイルもより柔軟にしたいという要望も増えてくるでしょう。どこにいても、どの時間でも、できる限りアクティブに仕事をしたいと考えています。今後もさまざまなワークスタイルが登場すると思いますので、都度、対応していきたいですね。

――いつでもどこでも仕事だと、すべての予定が仕事で埋まってしまいそうです(笑)。自分の時間が欲しいときはゴール機能を使うなど、すべてカレンダーが切り分けしてくれるのでしょうか。

世界がとてつもないスピードで変わりつつあります。プライベートな時間と仕事の時間をどのように管理していくか目まぐるしく変わっていきます。Apps for Workはコンシューマーでも使える機能がたくさん備わっていますので、仕事もプライベートもまとめて一つで管理できます。

例えば、プライベートで病院の予約を入れていたとします。ボスからミーティング要請があり、病院の予定と被りそうになった場合、システム側がスケジュールを最適化し、病院の予定を回避してスケジューリングしてくれるのです。

――もし、病院も患者も予定管理にカレンダーを使い、それぞれが連携することで、社会が有機的にスケジューリングしてくれると面白いですね。

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