ローマ:4世紀壁画から青銅硬貨 日伊チームが発見 - 毎日新聞
毎日新聞2016年4月5日 07時30分(最終更新 4月5日 07時30分)
壁画から取り出された青銅硬貨=山田順・西南学院大准教授提供
【ローマ福島良典】古代ローマ遺跡コロッセオ近くの初期キリスト教時代の礼拝室跡から4世紀の壁画が発見され、描かれた人物像の左目からローマ帝国の青銅硬貨が出土した。キリスト教普及以前から伝わる習俗を示している可能性があり、発掘の日伊共同チームを率いる山田順・西南学院大准教授(53)は「ローマが多神教社会からキリスト教一神教社会に変容する過程を解明する上で貴重な資料だ」と話している。
壁画は昨年、コロッセオ南東約800メートルの「サン・ジョバンニ病院」の地下約7メートルの発掘現場で、二つの壁に挟まれた幅約50センチの空間から見つかった。
縦1.2メートル、横2.5メートルの白いしっくいの上に、ぶどうを収穫し、ワインを造るために踏みつぶす4人の男性の姿が描かれていた。1人の左目の位置のしっくいから直径約1センチの青銅硬貨の一部が露出しているのを山田氏が発見した。
初期キリスト教考古学を専攻する山田氏は「(キリスト教以前の)古代末期の地中海世界では、冥界に渡る船賃として硬貨を死者の目の上に置いて埋葬する習慣はあったが、居住空間にある壁画の人物像の目の位置に埋め込まれていた例は報告されていない」と指摘する。硬貨は昨年12月に取り出され修復中で、流通期間が分かれば壁画作成時期の特定に役立つ。
キリスト教はコンスタンティヌス帝のミラノ勅令(313年)で公認されたが、庶民が信仰を深めた過程は不明。現場からは、3世紀の小鳥の壁画▽4世紀のキリスト教壁画▽5〜6世紀のキリストと聖人の壁画も発掘されており、山田氏は「庶民の生活領域では(多神教の)異教的なもの、キリスト教的なもの、中間的なものが混在していたはずだ」との仮説を立てている。
成果は、ローマのドイツ考古学研究所で2月23日に開かれた古代末期考古学研究会で報告された。
同研究所のノルベルト・ツィンマーマン副所長は「壁画はローマ社会の変容を物語り、硬貨は興味深い新発見。キリスト教化の始まりの解明に新たな光をあてる研究だ」と高く評価している。
旧約の頃? 新約の頃?
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